なぜ親権争いは母親が有利か
法律上、離婚をした場合に子の親権は父親か母親かのいずれか一方に属することになっています。日本では協議離婚が9割を占める現状、ほとんどの場合で親権者の決定もまた協議により定められていることになります(民法819条1項)。つまり、法律上は親権者の決定の協議(親権争い)に際して特別母親が有利である規定を定めてはいません。
母親が親権争いに有利である理由は親権の内容に関わってきます。親権者は未成年の子の利益のためにこの監護及び教育をする権利を有し、義務を負うことになっています(民法820条)。親権の具体的な内容として、子の監護権・養育権(同条)・子の居所を指定できる権利(同法821条)・必要な範囲での懲戒権(民法822条)・子の職業許可権(同法823条2項)があります。また、親権者は子の財産を自分の利益のために利用することを許されません。
以上のような比較的広範な子に対する権利・義務を委ねるには、離婚時点で子の教育にどのように関わったか、そしてどちらが積極的に養育をしたかという観点から親権者が決定される傾向にあります。日本の現状では依然として母親が育児をするという役割を与えられることが多いので、親権争いは母親が有利になるということになると考えられます。
また、子が乳幼児の場合だと、必然的に母親の存在が不可欠であるので、家庭裁判所の審判・調停などでは母親を親権者として優先的に認定することが多いようです。ただ、裁判所も「子の利益」に即して総合的な判断をするようです。
もちろん、全ての親権争いで母親が有利になるわけではありません。現実として、母親が負ける場合もあります。これは上述の裏返しになりますが、父親が子の養育に積極的に関わっている場合が考えられます。また、母親の不倫により離婚をするような場合では親権者は父親になることも考えられます。
要するに、親権争いは「母親だから有利」なのではなく、「母親が実際の養育に関わっているから有利」であることになります。重要なのは、「子の利益」だったり、子の気持ちを尊重してあげることになります。注意すべきことは、親権者になっていないからといって子の扶養をしなくても良いということを意味しないことです。特にシングルマザーの貧困が問題視される現状、親権者でなくとも積極的に父親が扶養料を捻出していくことが求められます。
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