相続法改正の内容と施行日
■相続法改正の内容と施行時期
相続法改正によって従来の相続法と大きく変更される事項について、ひとつずつ解説します。いつから適用されるのかという点については、改正内容ごとに異なるので注意が必要です。
①配偶者居住権の新設(2020年4月1日施行)
配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に居住していた配偶者に、居住の継続が認められるという権利です。
具体的には、被相続人の建物に無償で居住していた場合には、最短でも6か月間は居住することができます(短期取得時効、1037条1項)。これは、遺贈(遺言の効果による相続)等によって第三者が建物の所有権を得た場合であっても認められます。
そして、長期の配偶者居住権を遺贈や遺産分割、死因贈与によって取得すれば、終身の居住権が認められます。
従来は、そうした建物に居住する配偶者が建物を相続し、建物の所有権を取得することによって居住するのが一般的でした。しかし、各相続人には法定相続分という取り分が定められています(民法900条)。そのため、一般に財産的価値の高い建物を相続することで配偶者の相続分のほとんどを占めてしまい、金銭等の他の財産を取得するのが難しくなることも少なくありません。その結果、生活費に困ってしまう等の不都合がありました。
配偶者居住権を利用すれば、建物の所有権は他の相続人が取得し、そこに住む権利のみを配偶者が取得するということが可能になります。これによれば、配偶者は金銭等の財産を取得しやすくなります。
②遺産分割についての変更
・婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(2019年7月1日施行)
従来の制度では、生前贈与によって相続人が被相続人から取得した財産は、死亡時の相続により取得した財産としてみなされていました。これにより、生前贈与を行っても行わなくても、結果として財産状態が変わらないということがありました。
しかし、改正により、婚姻期間が20年以上の配偶者への生前贈与は、原則として相続財産とみなされないことになりました。
・預貯金の払い戻し制度の新設(2019年7月1日施行)
従来、相続財産になった預貯金債権は共同相続人全員の共有財産となり、相続人単独での払い戻しはできないとされていました。
改正法では、(相続開始時の預貯金債権額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分)の限度で単独による払い戻しが認められるようになりました。
③遺言制度についての変更
・自筆証書遺言の方式の変更(2019年1月13日施行)
従来、自筆証書遺言を作成するにあたっては、その全文について手書きで記載することが要求されていました。改正法では、財産目録の部分については自書以外の方法(パソコン等)により記載し、これに署名押印するという方法を採ることが許されています。
・法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日施行)
自筆証書遺言を作成した場合に、法務大臣指定の法務局に保管申請を行うことができるようになりました。
④特別の寄与の制度の創設(2019年7月1日施行)
従来、各相続人が取得する財産の割合(法定相続分)は、「配偶者」、「子」、「直系尊属」といった地位に基づいて画一的に定められていました。改正法では、被相続人の介護等に尽くした被相続人の親族が、他の相続人に対して金銭の請求を行うことを認めています(1050条)。
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